2013年「和食」が世界無形文化遺産に登録されました。

そして、その流れを受けて SAKE(日本酒)の輸出量も、この10年で倍増しています。(農林水産省 日本酒をめぐる状況より)

世界に広まりつつあるSAKE(日本酒)ですが、意外と「日本酒がどのように造られているのか?」について知らない日本人も多いのではないでしょうか?

ということで。

今回は高知で230年以上の歴史を有し、あの有名な「久礼」の日本酒を手作りし続けている西岡酒造さんに、日本酒のつくり方・日本酒造りの仕事について、お話を伺いました。

日本酒に携わって45年の河野さん


45年間に西岡酒造で酒を造り続けている河野さん

–––今回はお時間頂きましてありがとうございます。まず河野さんご自身の話について教えて頂けますでしょうか。

私は23歳の頃にこの西岡酒造に入社して、もう45年が経ちました。

最初の15年くらいは営業として外回りをしていたのですが、現在は蔵の中で酒造りをする仕事をしています。

そして、私が入社した頃と今では酒造りのやり方も変わってきましたね。


西岡酒造さんの歴史ある建物

–––もう45年も西岡酒造に関わっているんですね!その歴史の中で酒造りはどのように変わったのでしょうか?

西岡酒造は江戸時代中期の天明元年(1781年)に、初代井筒屋仁助が創業し、現在9代目に至っている230余年の歴史を持つ蔵元です。

日本酒造りにも機械化の波が押し寄せてきていて、西岡酒造では早い時期に機械設備を取り入れてきた歴史があります。

米を洗うところから、エアシューターという機械を使って、空気で仕込み場まで送り、電動で蒸していくといった具合です。

しかし、現在では全ての工程を手作業に戻したんですよ!

西岡酒造が今でも手作業にこだわる理由


–––そうなんですか!? なぜ一度機械化した製造工程を手作業に戻したのでしょうか?

もちろん、機械の方が雑菌入らないし便利です。

雑菌は人の手から入りますらね。

でも、機械で作られた酒には人間味がないと思います。

機械の良いところは同じ品質の酒を大量に生産できるということです。

スーパーやコンビニにパックで並んでいるお酒は、1回の仕込みで米が100トン、水はその1.5倍の量が必要になります。

その量の米と水に、3段か4段の大きなプロペラを当てて、米も麹も全て粉砕して作るんです。

温度管理もコンピューターが行い、人間が入る余地が一切ないんですね。

–––お酒工場といった印象を受けますね。

そうですね。

なので、西岡酒造では全国どこでも飲めるお酒を大量に作るのではなく、地元の米と水を使って高知でしか造れないお酒を作っていきたいと考えています。

そういった背景もあり、機械での生産から手作業での生産に戻したのです。

日本酒づくりは米づくりから


米のブランドや出来にもとことんこだわる

–––では、続きまして手作業での日本酒造りの工程に関して教えてもらえますか?

日本酒は水・米・米麹から出来ていますので、まずは米づくりから始まります。

3月から田んぼに入り、10月の稲刈りまでは農作業です。

稲刈りが終わったら酒蔵に入り、酒造りが始まります。

そして3月になったら、また田んぼに入る・・・・。というサイクルですね。


日本酒専用に作られたお米

–––なるほど!まずは米づくりからなんですね。具体的にはどういった業務をするのでしょうか?

米づくりに関しては、苗づくりから始まり、代かき・田植え・草取り・稲刈り・籾摺りと通常の農業と同じような流れで仕事をします。

農家仕事ですので、基本は太陽の出ている間に働きますね。

育てる米は、普通の米とは違って酒専用の米。

米の中心部分に白いデンプンの塊が多く含まれていて、水分を吸いやすいのが特徴です。

また、発酵させるのに必要な菌も入りやすく、味のいい麹が出来やすくなっていますね。

日本酒づくりは8割が洗い物!?


大きな樽の中には発酵中の日本酒が入っています

–––酒造りといっても半分は農家と同じ仕事をされているんですね!稲刈りが終わって蔵に入ってからは、どんな仕事をされるんですか?

米作りと酒蔵での働き方は全く違います。

そして、意外かも知れませんが酒蔵での仕事はほとんどが「洗い物」です。

なんでも洗う!とにかく洗う!!

例えば、お米を入れる樽などは毎日洗います。仕事の8割は何らかの洗い物といっても過言ではありません!

–––8割は洗い物ですか!!それは驚きです。 10月〜3月までが酒蔵の仕事ということでしたが、寒い時期の洗い物は大変じゃないですか?

洗い物には、水温18度くらいの井戸水を使うので、手がかじかむような事は少ないですよ!

また、水だけではなく熱湯やアルコール消毒をすることもあります。

でも、一番大切なのは水を使って綺麗に洗うこと。

この辺りは、もともと川が流れていた場所なので地下水が流れているんです。

機械を使う部分もありますので、バカみたいに力が必要な仕事ではないですが、ずっと体を動かしているような仕事ですね。

毎日・毎日同じ洗い物を繰り返して行います。洗い物自体は難しい仕事ではないので、入って1週間でできるようになりますよ!

–––そこまで洗い物が大切なんですね・・・! 先ほど8割は洗い物と仰っていましたが、他にはどんな仕事があるのでしょうか?

洗い物以外では、米を蒸したり麹の手入れをしたりします。

1日のおおまかな流れに沿って説明すると、まず朝の8時から40分くらいかけて麹の手入れをします。

3日ごとに場所を変えるサイクルがあるので、それに合わせて蒸した米の場所を変えて発酵を促すのが目的。

麹の手入れは、蒸した米を手にとって種麹を振ったりするのですが、酒造りというと多くのイメージするような風景だと思います。

続いて、蒸した米を冷却するための機械にかけ、冷却が終わるのが、だいたい9時半から10時前くらい。それ以降は昼まではほぼ洗い物です。

昼食を食べ終えてから15分〜20分で酒を仕込む作業をして、そのあとは米を洗います。

他の空いた時間は洗い物で、とにかく洗い物をしている時間は非常に多いです。

日本酒は生き物!?

発酵中の日本酒について語る河野さん

–––一般的に「酒造り」と聞いてイメージするような作業よりも「洗い物」をしている時間が圧倒的に長いんですね。 やはり洗い物というのは酒造りにおいて大切な作業なのでしょうか?

そうですね。高品質なお酒を作るために非常に大切な作業です!

お酒をつくる上で、絶対に譲れないところがあって。

とにかく、きれいに洗ってもらわないと。テキトーに洗うのは仕事じゃないですから。

例えば変な雑菌が酒に入ったら、お酒の味に影響が出てしまいます。

日本酒は麹から出来ていますので、生き物みたいなものなんですね。

–––なるほど・・・。生き物ですか。そう捉えると色々なことに気をつかう必要がありそうですね。

そうですね。例えば蔵に入る1ヶ月前の期間から納豆は食べません。

お酒の麹に納豆菌がついたら、しっかりとした味の麹にならないからです。

納豆は大好きなんですけどね笑

また、納豆以外でも手洗いうがいをしっかりして、絶対に異物が入らないようにしています。

これは、仕事に対する心構えみたいなものですね。

–––納豆はNGなんですね! 色々と気を配る点も多くて大変な仕事かと思いますが、どういった時にやりがいや嬉しさを感じますか?

やはり、うまい酒ができた時ですね!

全く同じ米で同じように作っても、手作業でやっていますので、1本1本味が違うんですよ。

はじめのころは、「うまい」「まずい」が分からないかも知れません。

でも、長く続けていると1本1本の微妙な違いが分かるようになってきます。

さらに熟練してくると「この酒はこういう酒にしよう。この酒はこういう酒にしよう。」といった具合に、米や麹の状態に合わせた対応ができるようになってくるんです。

そうなってくると非常に面白いですよ!

酒と共に生きる!日本酒づくりに向いている人とは?


西岡酒造を代表する日本酒「久礼」

–––やはり、美味しいお酒を作るのが仕事の喜びですよね!因みに、どういった人が酒造りには向いてますでしょうか?

1つのことを真面目に丁寧に続けられる人ですね。

特にうちの場合は手作業ですから。

あとは、お酒が好きな人がいいですね。

仕事だからやるというのではなく、「お酒を作ってみたい」「米から作ってみたい」といった想いがある方が来てくれると嬉しいです!

–––河野さんのお話を聞いていると、お酒への愛情を感じられるので、同じような人が来てくれると良いですね! 加えてお聞きしたいのですが、実際の勤務時間などの詳細はどうなるのでしょうか?

基本的には、地域おこし協力隊としての就業規則に従って働いてもらいます。

就業時間に関しては、微生物相手の世界なので17時までのこともあれば19時までかかることもあります。

また、酒蔵ではその日のうちに終わらせなくてはならない仕事」があるので、その点は理解しておいて欲しいですね。

–––酒とともに働くといった感じですね! 新人が入った時にまずは何から始めていきますか?

まずは、洗い物を覚えてもらいます。

慣れてきたら、お酒をぼんやりとみてもらうようにしていますね。

朝でも夕方でも良いのですが、同じ時間・同じ状況で。

1日で変わることはないのですが、何日も見ていると温度だとか、天気だとかで変化が見えるようになってくると思います。

まずはそこからですね!

西岡酒造のこれから

–––なるほど!職人の世界は「習うより慣れろ」ですね。 最後に、西岡酒造さんが今後どういった方向を目指していくのか教えて頂けますでしょうか?

今後の日本酒造りは、「手作りで つくり続ける蔵」と「工場のように大量生産する蔵」とが、ますます極端に二極化していくと思います。

そんな中、西岡酒造では日本酒を食中酒としてとらえ、高知の地酒として高知の料理に一番合う酒を作っていきます。

食中酒は、酒が弱すぎても、強すぎてもダメ。

酒と料理、お互いが引き立てあう関係が理想です。

特に、うちのお酒は カツオに合わせたら日本でどこにも負けないと思っています。

最近では、万人に受けるように日本酒全体の味が均一化してきているような傾向がありますが、西岡酒造では高知の素材を使って高知の食べ物に合う地酒を作り続けていきたいですね!

募集職種一覧